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ProjectMeltDown

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Ver.White ACT5

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瞳に映る惑星
Ver.White act-5



       閉店作業のすんだ喫茶店。喜代美と正樹がいる。


正樹    ふあー、疲れた。最近仕事で疲れるようになった気がする。

喜代美   やあいじじい。

正樹    なあにい。

喜代美   なんてな。疲れの原因はあたしだろうよ。

正樹    違うよ。

喜代美   まだ新人きどりだし。

正樹    自覚があるなら心配ないよ。

喜代美   やっさしい。正樹。

正樹    やさしいとはよくいわれる。

喜代美   なまやさしい、正樹。

正樹    なまやさしい?

喜代美   似合うよなあ。なまやさしいって言葉。

正樹    おれは喜ぶべき?

喜代美   ちょっとはね。でも、鵜のみはやだな。

正樹    そのへんは最近疑り深いよ。ひっかけ多いから。

喜代美   賢くなったねえ。

正樹    おれは賢い方だよ。

喜代美   ここじゃ正樹の方がセンパイだしね。

正樹    喜代美は人生の先輩っぽいよな。

喜代美   正樹けっこう変わったよね。

正樹    いつと比べて?

喜代美   友達になったくらいの頃からすると。

正樹    年とっただけだよ。

喜代美   一ヶ月も経ってないのに年とったとかいわないでくれる?

正樹    そうこういってるうちに、小物屋さんもうすぐオープンするんだよね。

喜代美   開店祝いはこっちなんだ。おかげでバイトだけで閉店作業。

正樹    店長って結局なにものなんだろう。

喜代美   深入りするなよ。

正樹    ?

喜代美   あの店長見て育ったら正樹は似たようなひとになる気がする。

正樹    何で?

喜代美   基本型ってゆうのかなあ。生きる姿勢に似たものがあるのよ。あんまり右往左往しない感じとか。

正樹    へえ。

喜代美   ま。正樹にはまだわかんないよね。

正樹    ん?ちゃんと理解してるよ。

喜代美   じゃあ、説明してよ。

正樹    俺と店長は基本的なとこが似てるから、全部までそっくりなるなよ。とおっしゃってる。

喜代美   普通の解釈だな。

正樹    普通でいいんだよ。

喜代美   普通かあ。なんとなく避けてはいるんだけどな。気づいたら結構普通なんだよな。

正樹    で、ありがちないい女。

喜代美   街を探せば私みたいなのは結構いるでしょ。頑張っても頑張っても上はいるし。

      私にしかない道ってないのかなあ。

正樹    俺には充分魅力的に映るよ。

喜代美   ありがとさん。褒めてもなにもでないよ。

正樹    そだね・・・ねえ、開店祝いって何するのかなあ。やっぱりパーティみたいにするのかなあ。

      この店の雰囲気的には誕生日会みたいにやるんじゃないかなとは思うんだけど。

喜代美   飾り付けしなきゃなあ。かといってクリスマスの飾り付けにしちゃあ早いし。

正樹    誰が準備するんだろ。

喜代美   明日、美穂さんに聞こうよ。

正樹    そうする。しっかし、結婚式とかってまだ先かな。

喜代美   あの店長のことだから開店祝いの場を借りてとかじゃない?

正樹    そういうの大事にしてそうだしね。

喜代美   うちのカレは無理矢理雰囲気作る方だから、まったく大事にしてないんだよな。

正樹    ちゃんと会ってるの?

喜代美   当たり前。そこそこ会わないとどこへふらふら遊びにいっちゃうのやら。

正樹    よく続くなあ。

喜代美   いろいろプライドもあるしねえ。あんないい男、頑張ってやっとって感じ。

正樹    喜代美は恋してないと死んじゃう人。

喜代美   そんなときないからなあ。そんなことばっかり頑張ってるから道が見つからないんだけどね。

正樹    つきあってるとなんか面白い?

喜代美   どうだろうなあ。喧嘩もよくするし、私はよく泣くし。

正樹    泣くの?

喜代美   泣くよ。「泣かないぞ」ってふんばりながら。小さな試練の数々も恋の栄養。

      ま、私みたいな恋愛至上主義者にしか通用しない理屈だけどね。

正樹    俺もそうなったほうがいいのかなあ。

喜代美   ええ~。似合わない。

正樹    必ず誰か好きだし。俺も恋愛至上主義者予備群かもよ。

喜代美   今はまだ美穂さんだっけ。

正樹    そうでもない。

喜代美   うそつき。

正樹    なにがあ。

喜代美   どこが恋愛至上主義者なのよ。

正樹    おれ好きな人変わったんだ。

喜代美   初耳。

正樹    結構身近にいて、でも彼氏付きのやつ。

喜代美   前と条件変わんないじゃない。

正樹    俺と年は同じ。

喜代美   いないなあ。私ともタメ。・・・おい!

正樹    だめ?

喜代美   駄目!

正樹    どうして。

喜代美   どうしても。

正樹    ・・・惚れちゃってさ。

喜代美   ありがとう。でもダメ。私、和馬しか見てないから。

正樹    その和馬は喜代美見てるか分からないだろ。

喜代美   怒るよ。

正樹    ごめん。

喜代美   第一、告白の基本もできてない。あとでいっぱいいいわけするんでしょ。

      正々堂々フラれる覚悟がないなら、胸の奥にしまっておいてよ。

正樹    そんなふうにいわなくても。

喜代美   どうして友達でいられないの?みんなそう。仲良くなったら告白。私ってそれだけ?

正樹    ・・・喜代美は恋ばっかりでよく疲れないね。

喜代美   どれだけの修羅場をくぐってきたと思ってるの?私はそういう世界に生きてるの。

      別れてもつき合っても男フッても友達じゃなくなっても、全部自分の生きる力にして。

      もっとキレイになって幸せになるんだから。安心させてとか正樹には頼まないよ。

正樹    俺、フレれた?

喜代美   うん。フった。

正樹    じゃあ友人として慰めてよ。

喜代美   詭弁よ。素直に受け止めて、凹むなりキレるなりお好きにどうぞ。

正樹    チャンスはないのかあ。

喜代美   正樹のことそういうふうに考えられない。和馬今浮気しようとしてから集中したいの。

正樹    そう。

喜代美   だからごめんね。正樹にはもっと似合う別のいい女が見つかるよ。

正樹    フォローになってない!

喜代美   帰ろう。お店閉めてから結構たつよ。今日は送ってくれなくていいよ。

正樹    ・・・うん。先に帰って。今日はたぶん変だから。

喜代美   うん。先に帰る。・・・また明日ね。

正樹    ああ。じゃあね。また・・・明日。


       背を向けて喜代美が歩いていく。元気いっぱい笑顔で手を振る喜代美。
       元気なく小さく手を振る正樹。
       正樹、手前舞台で座っている。同時に奥舞台に喜代美。夜道で和馬に電話している。


喜代美   なんで?私、和馬に会いたい。やだあ、会うのお。

      でも今日は会いたいよお。・・・ばか。そんな風にごまかすな。

      うん。・・・え?あ、ちょっと・・・何切ってるのよ。

      はじめてだよ。和馬。私ずっと誰からも好かれてて、いつも自分からフってて。

      だから怖い。和馬はどうにもならないから怖い。大好き、大好きでいるのは私だけ?

      和馬は私と他の人、同じ?・・・私は私でいるよ。私らしくしてるから、ちゃんと側にいて。

      貴方に放っておかれるとバランスが崩れるから。ちゃんと側にいて。側にいさせて。

      和馬は私のカレシでしょう。泣いたら飛んできてね。泣いたらとんできなよ。・・・ばか。


       喜代美完全に掃ける。手前舞台では正樹がまだ呻いている。


正樹    なんで、こうなるのかな。理由考えてもいけないのかな。

      辛いなあ・・・彼女が欲しいんじゃなくて、喜代美といたかっただけなんだよ。

      あーあ。変なのな、俺。


       鷹宮がそろりと入ってくる。


鷹宮    あら?バイトさんが閉めてるの?

正樹    はい?

鷹宮    正太郎君いない?

正樹    しょうたろうくん?

鷹宮    ここの店長よ。今日はいないのかしら。

正樹    最近はよく留守にしてますよ。どちら様ですか?

鷹宮    店長のオトモダチよ。

正樹    はあ。

鷹宮    一人で閉めてて危なくないの?

正樹    他の人は先に帰しました。

鷹宮    君、雰囲気あるわねえ。なんか懐かしいなあ。あいつの若い頃となんか似てる。

正樹    店長と似てるって話ですか?それより、部外者の方は入れませんよ。

鷹宮    あら?ある意味身内よ。ここのことだってくわしいわ。

正樹    まさかあ。

鷹宮    じゃ、そこのカウンターの裏にあるもの当ててあげようか。

正樹    はいい?ここですか?

鷹宮    発泡酒があるはずよ。

正樹    うわ!あった。

鷹宮    はっはっは。私はなんでもお見通し。

正樹    何ものですか。

鷹宮    時代の仕掛人よ。

正樹    はあ。

鷹宮    頼みごとがあるんだーとか言われてたんだけど、何の約束もなく来ちゃったのよねえ。

      ここにくればいるもんだと思ってたんだけど、いないのかあ。

正樹    で、どうします?

鷹宮    このお店なんか始めるの?あいつが見つからない時期ってなんか準備してるときでしょう。

正樹    そうなんですか?一応、店長の家が小物屋さんになるって言ってましたよ。

      で、開店祝いはここでやるんです。

鷹宮    小物屋。おとなしくでたわね。

正樹    結婚なさるそうで。

鷹宮    は?

正樹    店長、結婚すんです。知らなかったんですか?

鷹宮    ・・・畜生。そういうことかあ。

正樹    友達というか元カノとかですか?

鷹宮    そんなあっさりしたもんじゃないわよ。

正樹    大変そうですねえ。

鷹宮    大変そうもなにもなんなの?アイツ!

      あー、いらいらするう。よし、お前、付き合え。

正樹    何言ってるんすか。

鷹宮    あーうるさい。しょうたろうのとこの若いの。飲むぞコラ。

正樹    いやですよ。

鷹宮    いいの!来いこら。飲みのなんたるかを教えてやる。

正樹    うわああああ。

鷹宮    あたしの青春返せー!

正樹    ちょ、ちょ。

鷹宮    お姉さんが遊んであげるって言ってんの!うだうだ言わずについてきなさい!


       耳を掴まれてどっか連れていかれる。
       香織の部屋。香織と美穂。


香織    和馬は話は面白いんだけどなあ。なーんか信用できないんだ。

      うおー。正樹、何やってんだあ。香織様さみしいぞお。

美穂    それで。あの人なんか言ってたの?

香織    店長?あのね。アドバイス。

      ・・・どんなに正樹君が別人みたいになっても好きでいられる?って。

      うんって言ったら。じゃあやっぱり待つんだよ。チャンスは必ずくるからって。

美穂    へえ。

香織    待つかあ。わかるようでわからない。

美穂    信じようよ。

香織    え?

美穂    正樹君は香織をいつか必ず注目する。それをあの人も保証してる。

      あとは、香織がそういうもんなんだって思えればいいんじゃない?

香織    そういうもんかなあ。

美穂    和馬くんに違和感があるのも、そういうこと。

香織    どういうこと。

美穂    ガツガツしてると魅力台無し。

香織    がつがつ。

美穂    愛してる~愛してる~って「愛してるオバケ」な奴。

香織    ・・・うざいねえ。

美穂    だから「待つ」

香織    ・・・ねえ。お姉ちゃん。結婚本当にするの?

美穂    そりゃね。何で?

香織    ん?なんとなく。

美穂    ・・・?

香織    私ね。正樹にそこまでは求めてないんだよね。

      つき合うとかいうのも、よくわからない。結婚なんてもっとわかんない。

      ・・・一緒にいられればいいの。

      こういうのってちゃんとした片思いなのかな。

      でもね、やっぱり他の人とくっついたりしたら、なんかヤだな。

美穂    お日さまみたいだね。

香織    正樹が?

美穂    いればいいいんでしょ。で、あったかいんでしょ。

      で、間に別の星が挟まると、見えないし怖いし寒いし。

香織    私は地球みたいなモンかな。へえ、太陽眺めてるんだ。

美穂    で、ぐるぐるまわってるの。あったかくなれるように、いつも太陽を気にしてるの。

香織    じゃあ、和馬は間違って落ちてきた隕石だね。

美穂    他の女の人が内側回ることもある。

香織    ツライねえ。

美穂    でもね。太陽ってのも、何か見てないと元気出ないんじゃないかな。

香織    ・・・正樹は誰かを見ていたい。正樹の瞳には誰が映ってるのかな。惑星、見てるかな。

美穂    確かめる方法ってないものかしらね。

香織    お姉ちゃんが知らないんじゃわたしはどうしようもないよ。

美穂    そうねえ。しっかりしないと。いろいろ忙しくなるし。

香織    みんな成長するんだねえ。

美穂    よし、よく寝て大きくなれ。

香織    もう、そんなに伸びないよう。

美穂    ま、いいから歯磨いてきなさい。

香織    ほほう。母の練習かア。

美穂    いいから。

香織    はあい。


       香織が自分の部屋を後にする。


美穂    ねえ正樹君、その後少しづつ頼もしくなったね、でもなんか変わった気がする。

      いい意味では男らしいんだけど、悪い意味では粗野な感じになった。

      今、どんなバランスで動いてるの?


       店内。


喜代美   で、周りが思う以上に正樹には変化が起こっていた。

      正樹に複数の彼女ができたという噂が私の元に集まってた。

      お店を閉めるわずかな時間。私は正樹を問い詰めてみた。


       正樹が片付けをしている。


正樹    う~おつかれ。今日は早く帰ろうかな。

喜代美   誰かと会うの?

正樹    いや別に。

喜代美   聞いたよ。いろいろ。

正樹    何を?

喜代美   あの夜。大人の女と出かけてたとかいう話。

      それから、大学でワルイ遊び方してるって話。

正樹    それが?

喜代美   私がそういうことしてたらまあ、ありがちだけど、正樹がやると変だよ。

正樹    じゃあ、俺もそういう奴なんじゃない?

喜代美   私は別に構わないけど、正樹印って別物だった気がする。

正樹    なんか怒る理由でもある?

喜代美   なんか自分見失ってない?

正樹    じゃあ、なんとかしてくれんの?

喜代美   それヤケのつもり?

正樹    そんなことないよ。ただ、なんかコツが掴めてきたって感じ。

喜代美   それで自分の価値を下げてるんだってわからないの?

正樹    お前と変わらないよ。

喜代美   へえ、私のことそういう人間だって思ってるんだ。

正樹    どういうふうにだよ。

喜代美   ギラついてる。

正樹    悪い?

喜代美   そんなんでモテたって今だけだよ。

正樹    いいじゃん。結果だせれば。

喜代美   変わったね正樹。

正樹    そう、前とどっちが好み?

喜代美   まだ前のほうがまし。

正樹    でも、方法はあるんだな。プレゼントあるんだ。目つむって。

喜代美   え?


       目をつむる喜代美。キスしようとする正樹。
       喜代美が正樹を突き飛ばす。


喜代美   ・・・馬鹿にしないでよ!そんなの大体予想つくよ!

正樹    そう。


       そこに和馬と鷹宮が入ってくる。


鷹宮    あらあ。また、タイミングを・・・ってなんか修羅場?少年。

正樹    麗華さん。

鷹宮    あー、なんかどろどろしてそうだから、私は退散かなあ。

和馬    喜代美。何してんの?

喜代美   ・・・ちょっとね。

和馬    ちょっと、何?

喜代美   なんでもない?

和馬    何でもないって顔かよ。

喜代美   ほら、仲良くなって間もないしさ。ちょっとした見解の相違。

鷹宮    ああ、和馬の彼女。

喜代美   (鷹宮に)あなたが、レイカさん?・・・(和馬に)なんでこんな時間に一緒なの?

和馬    仕事。

喜代美   ・・・!

和馬    んなことより、なんなの?この状況。

喜代美   だから。ねえ、正樹。

正樹    ちょっと、コクってただけです。

和馬    そう・・・残念ネ。喜代美はこのカズマ様の虜だから。

喜代美   ・・・そう、わたし和馬の虜。

鷹宮    あのさあ。人の店でごちゃごちゃやんの好きくないのよねえ。

      勝手に仕切らせてもらうけど、場所変えない?

      なんか、面白そうじゃない?少年、その後どうなのよ。

正樹    ぼちぼち。

鷹宮    和馬が増えたみたいでやあねえ。

喜代美   正樹くんと歩いてたのってこの人?

正樹    うん。

喜代美   ふうん。

和馬    へえ。

喜代美   何をうなずいてるの?

和馬    レイカさん。俺パスっす。

鷹宮    つれないわねえ。

和馬    ブラザー。キャラクター守れっつうの。

鷹宮    は?

和馬    俺が俺らしくないこというと、周りも大変だし、自分も大変。

      バネとおんなじ。引っ張ったらまたもどるの。

正樹    ・・・え?

和馬    うまく言えないけど、とんがるの今だけのほうがいいよ。

正樹    それは俺の勝手。

和馬    知ってる。

正樹    ・・・なんか聞いてるのと違う感じのひとだ。

喜代美   和馬もいつもと違うよ。

和馬    これも俺・・・喜代美い帰ろうよう。

喜代美   どこに。

和馬    ふたりのラブラブすいーとホームへ。

鷹宮    やらしいなあ。その響き。

喜代美   和馬の部屋?うん。行く。

鷹宮    少年。待とうか?また飲みに行こうぜえ。

和馬    麗華さん。真面目な奴に遊び教えちゃダメっす。極めようとするから。

鷹宮    今日の和馬は普通の青年なんだね。わかったいうこときいたげる。

      一人で帰るよ。アイツによろしくねえ。

正樹    はい。

喜代美   先、帰るわ。


       喜代美がコートをとってきて、ばっと着る。その間、あまり話をするものはいない。


喜代美   じゃね。

正樹    じゃな。

和馬    うぃー。

鷹宮    ぐーばいー。


       正樹、ひとまずおじぎで待つ。


正樹    みんな、うるさいよ。


       もしかしたら本編中唯一の暗転。

 

Ver.White 第6場へ続く

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